パッシブハウスの坪単価と失敗しないためのポイントまとめ

パッシブハウスについて

パッシブハウスは欧米で注目されている住宅で、自然の採光や通風を計算した家づくりで、少ない消費エネルギーで暮らせる家になります。

最近では日本でも少しずつ耳にする機会が増えているので、興味がある人は、ぜひチェックしてみてください!

パッシブハウスとは?メリットデメリットを解説

私たち日本人にとって、省エネ住宅として思い浮かぶのは「ZEH住宅」や「スマートハウス」だと思います。

今回紹介する「パッシブハウス」は、ZEH住宅やスマートハウスとは違った省エネ住宅の形なのですが、欧米諸国ではパッシブハウスこそ省エネ住宅の理想形だと言われています。

・スマートハウス(坪単価目安:65~80万円)
HEMS(ヘムス)というシステムで効率的に使用する電力を管理することができる
※エネルギーを賢く使う家

・ZEH住宅(坪単価目安:70~80万円)
一般的な住宅より断熱性能を高めることで使用するエネルギーを抑えることができ、消費エネルギーを太陽光発電システムや蓄電池で補う
※家庭における消費エネルギーをすべて自家発電で補える家

・パッシブハウス(坪単価目安:75~100万円)
自然の採光や通風を計算した家づくりをすることで、エアコンなどの電化製品の使用を最小限に抑えて快適に暮らせる家にする
※自然エネルギーを最大限利用し、少ないエネルギー消費で快適に暮らせる家

このような違いがあるので、検討する際の参考にしてもらえばと思います。

パッシブハウスの歴史

パッシブハウスは1991年ドイツのパッシブハウス研究所にて住宅性能基準が定められました。

この基準は日本の一般的な住宅と比べ、2~3倍ほど高い断熱性能が求められる数値となっています。

ちなみに日本で最初にパッシブハウスが作られたのは、2009年に鎌倉で建てられた家だといわれています。

つまり、まだ日本に誕生してわずか10年弱という本当に新しいエコ住宅の在り方なのです。

このように新しい住宅の形なので、住宅会社によってパッシブハウスの解釈にバラつきがあるのも事実です。

太陽光パネルなどで創造した電気をフルに活用する住宅ではなく、あくまでも自然なエネルギーをそのままの形で有効活用するため、構造や立地に配慮した住宅。

さらに構造や使用する素材を、より断熱性の高い物を採用することで、室内のエネルギーを外に逃がさない住宅のことだと、管理人は解釈しています。

パッシブ住宅とは

出典:http://www.matsuzaki-komuten.co.jp/housing/

パッシブハウスには認定基準がある

住宅会社のホームページを見てもパッシブハウスの認定基準を詳しく書いている会社は多くありません。

その理由はパッシブハウスの認定基準が大変厳しく、日本国内においてパッシブハウスの認定基準をクリアし、パッシブハウスとして認められている住宅はほんのひと握りしかありません。

そのため多くの住宅会社では「パッシブデザイン」「パッシブ風住宅」などの言葉を使い、逃げ道を作っているのが実情です。

パッシブハウスの認定基準

  1. 冷暖房負荷が各15kWh/㎡以下
  2. 気密性能として50Paの加圧時の漏気回数が0.6回以下
  3. 一次エネルギー消費量(家電も含む)が120kWh/㎡以下

ちょっと聞きなれない難しい言葉や数値が並んでいますが、これらの基準値をクリアするのは相当難しいです。

例えば断熱材の厚さは30㎝ほど必要になり、これは一般的な住宅の2~3倍程度の厚さになります。

また窓サッシもアルゴンガスを充填した三重窓の設置が望ましく、窓の大きさにも厳しい制限が入ります。

これらの数値をクリアする住宅を建てるには、それなりの建築費を覚悟しなければなりません。

そのため「パッシブデザイン」など、パッシブハウスを意識した家づくりは可能ですが、実際にパッシブハウスとしての認定証を取得できる住宅というのは、本当にわずかしかありません。

実際に地元の工務店などに相談にいき、パッシブハウスを建てて認定証を取りたいと言うと、設計士さんが困った顔をされることがほとんどです。

メリットデメリット

パッシブハウスを検討するうえで、メリットとデメリットがあることも把握しておくようにしましょう。

メリット

パッシブハウスのメリットは以下のような点です。

  • 超がつくほどの高気密高断熱住宅なので光熱費を抑えることができる
  • 室内の温度を一定に保てるのでヒートショック予防など健康に良い
  • エアコンなどの人工的なエネルギー使用を抑えることができ環境に良い

デメリット

パッシブハウスのデメリットには以下のような点があります。

  • 断熱材や窓サッシなど高額な商品を多く使用するので、建築費が割高になる
  • 間取りや窓の位置、大きさに制限が多い

パッシブハウスは建築費が割高になってしまうことで敬遠されがちですが、今後暮らしていく際の光熱費が安くなることを考慮すれば、長い目ではトントンあるいはお得になることもあるかもしれません。

パッシブハウスの価格や予算の目安はどれくらいなのか?

パッシブハウスの問題は建築コストです。

地熱システムを採用したり、断熱材を厚くしたりする必要があるため、建築コストは通常の戸建て住宅よりも割高になってしまいます。

最低でも必要になる箇所の予算をピックアップしておくと、

  • 断熱材 プラス50万円~
  • 高性能窓サッシ プラス100万円~
  • 熱交換器 プラス70万円~

これだけで軽く200万円を超えてきます。

建築会社によってばらつきはありますが、現時点でパッシブハウスを建てようと思えば、坪単価にして80万円前後が妥当なラインだと思います。

場合によっては坪単価100万円を超えるケースもあります。

それぞれの坪数別に建築予算をまとめてみました。

  • 30坪:2,400~3,000万円
  • 35坪:2,800~3,500万円
  • 40坪:3,200~4,000万円
  • 45坪:3,600~4,500万円
  • 50坪:4,000~5,000万円

上記の数字は本体価格のみなので、そのほかに外溝工事費、別途工事費、諸経費、土地取得費などが掛かる場合があります。

東京都のパッシブハウス

東京都のパッシブハウス

東京都のパッシブハウス間取り図

出典:https://suumo.jp/chumon/tn_saitama/rn_134345/134345_0001/jitsurei/jc_0003/?suit=nsuusbsa20100707001 
  • 延床面積:111.20㎡(33.6坪)
  • 本体価格:2,710万円
  • 坪単価:80.6万円
  • 建築会社:夢建築工房

坪単価80万円を超えていますが、これでも予算と相談しながら可能な限りのパッシブハウスになるよう何度も打合せをしたとあります。

とくにこだわって部分として窓ガラスがあげられており、北欧のガデリウス社製のトリプルガラス+木製サッシを採用したそうです。

埼玉県のパッシブハウス

埼玉県のパッシブハウス

埼玉県のパッシブハウス間取り図

出典:https://suumo.jp/chumon/tn_saitama/rn_134345/134345_0001/jitsurei/jc_0008/?suit=nsuusbsa20100707001
 
  • 延床面積:118.83㎡(35.9坪)
  • 本体価格:2,750万円
  • 坪単価:76.6万円
  • 建築会社:夢建築工房

こちらの住宅は真冬でもほとんど暖房器具を使用することがない超高気密高断熱のパッシブハウスです。

建築する全棟で気密測定を実施しており、こちらの住宅の数値は「Q値0.9w/㎡」「C値0.2c㎡/㎡」と、パッシブハウス本国ドイツの住宅と同等の断熱性能が実証されています。

宮城県のパッシブハウス

宮城県のパッシブハウス

宮城県のパッシブハウス間取り図

出典:https://suumo.jp/chumon/tn_miyagi/rn_083026/083026_0001/jitsurei/jc_0030/?suit=nsuusbsa20100707001
 
  • 延床面積:117.17㎡(35.4坪)
  • 本体価格:3,000万円~3,499万円
  • 坪単価:84.7万円~98.8万円
  • 建築会社:菅原工務店

日射を調節するために電動ブライドを設置し、室内の壁は蓄熱に長けている珪藻土の塗り壁にするなど、かなりこだわりが詰まったパッシブハウスになっています。

そのため坪単価も85万円~100万円と少々高めになっており、積水ハウスや住友林業などの大手ハウスメーカーと同等か、それ以上の建築コストが掛かっています。

失敗しないために確認しておきたいポイント

パッシブハウスを建てるにあたり、一番大事なのは実績豊富な工務店や設計士に相談することです。

  • 実際にパッシブハウスの家を建てたことがあるのか?
  • パッシブハウスジャパンの認定を受けることができる住宅なのか?

パッシブハウスジャパンの認定を受けた住宅には、以下のような楯が贈られます。

パッシブハウス認定書

出典:https://sumika.me/contents/11227

省エネ建築診断士に相談する

パッシブハウスジャパンの試験に合格すると省エネ建築診断士の資格を取得することができます。

この省エネ建築診断士は全国に2,700名(2019年時点)ほどいらっしゃいます。

ここからは主要地域において、パッシブハウスの建築実績がある住宅会社、省エネ建築診断士がいる住宅会社を一覧にまとめておりますので参考にして頂ければと思います。 

東京都

社名 住所 電話
H2O design associates 東京都港区南青山4-26-6 南青山108-102 03-5468-6101
ArchiAtelierMA株式会社 東京都豊島区要町3-35-8-105 03 6909 3271
小野寺工務店 東京都調布市深大寺元町1-26-6 042-487-1550

埼玉県

社名 住所 電話
高橋建築株式会社 埼玉県秩父郡小鹿野町下小鹿野144番地 0494-75-2377
株式会社OKUTA 埼玉県さいたま市大宮区宮町3-25 OKUTA Familyビル 048-631-1111
maao 埼玉県川越市連雀町27-1 080-5543-2491

愛知県・名古屋

社名 住所 電話
鎌倉寿建築設計室 愛知県豊田市陣中町2丁目21-6 0565-33-1788
株式会社アイ設計 愛知県名古屋市昭和区北山町3-12 052-731-3317
今井賢悟建築設計工房 愛知県名古屋市守山区小幡南2-18-12SJKビルⅧ小幡302 052-217-0213

大阪府・兵庫県

社名 住所 電話
一級建築士事務所 Eee works 大阪府枚方市大垣内町1丁目1番10号-22 072-808-8616
アティックワークス株式会社 大阪府東大阪市荒川2丁目26番19号 06-6724-2639
松尾設計室 兵庫県明石市西明石北町1-3-20エルコーポ88ビル2F 078-928-4777

福岡県

社名 住所 電話
空設計工房 福岡県福岡市早良区高取 2-11-11-501 092-843-7782
株式会社SiZE 福岡県福岡市城南区長尾 5-17-13 092-863-5299
想家工房株式会社 福岡県筑紫野市針摺東1-6-3 092-285-3492

北海道

社名 住所 電話
今川建築設計監理事務所 北海道北広島市山手町2丁目4番地3 011-373-1188
光輝建設株式会社 北海道網走市潮見2丁目9-8 0152-45-2225

パッシブハウスの5大要素

パッシブハウスづくりに欠かすことができない5大要素があります。

  • 断熱性能
  • 日光利用
  • 自然風の取り込み
  • 日射遮断
  • 自然熱の有効利用

断熱性能

パッシブハウスの核となる部分は、この断熱性能にあります。断熱性能が十分でなければ、どんなに他の項目で優れた家を建てても意味がありません。

抜群の断熱性能を保つことができる家だからこそ、わずかな自然エネルギーでも快適に過ごせるマイホーム作りができます。

一般的な住宅の断熱材の厚みは75mm程度です。しかしパッシブハウスのなかには、断熱材となるグラスウールの厚みを300mmにしている家もあります。

断熱材は単純に厚くすればそれだけ断熱効果が高くなるというものではありません。

緻密な計算があって初めてその性能を発揮することができます。ですので、パッシブハウスはそれだけしっかりと緻密に断熱性能が考えられた家だというのがわかります。

日光利用

昼間の日光を最大限に利用するのがパッシブハウスの醍醐味でもあります。

目指すところは冬の時期でも昼間なら暖房をつけなくとも、日光のみでポカポカ快適に過ごすことができる家づくりです。

家族全員が一番過ごす時間が長いリビングは、より多くの窓を設けて最大限日光を取りこめる配慮がなされています。

夏の熱い日は日光を遮断する家、そして冬の寒いときは日光を取り入れる家を目指すので、夏と冬では目指す方向性が真逆になります。これがパッシブハウスの難しいところでもあります。

パッシブハウス特徴

出典:https://www.hokushuhousing.co.jp/column/12578/

自然風の取り込み

パッシブハウスで断熱性能と同じくらい大事に考えられているのが「通風」です。

この場所に家を建てれば、自然風が家の中をどのように通り抜けるのかなどを考慮しながら、間取りや窓の配置を考えていきます。

つまり、設計士にとって一番腕の見せ所でもある反面、設計士や建築士の力量がハッキリと現れるポイントでもあります。

「卓越通風」や「立体通風」など、あまり家づくりでは聞きなれないキーワードが多数でてくるので、家を建てる側の人も最低限の知識くらいは勉強しておかなければなりません。

日射遮断

パッシブハウスでいうところの日射遮断とは、夏のカンカンに熱い日差しを、少しでも家の中に取り込まないようにする取り組みのことです。

どんなに家の断熱性能をあげ、室内の空気を外に逃がさないようにしても、夏の熱い日差しは窓から入ってきます。

一般的な家庭で日射遮断といえば、レースのカーテンをつけるくらいなのですが、パッシブハウスでは日射を遮断するために、わざわざ窓の外に大きな樹木を植えたりすることもあるそうです。

樹木で日射を遮断

出典:http://www.global-kansai.or.jp/ecohouse/data/30.html

木を植えるというのは少し大げさかもしれませんが、軒を長めに作り、なるべく日中の日差しを取り込まないようにするなどの工夫もあります。

軒や庇で日射を遮断

出典:http://www.global-kansai.or.jp/ecohouse/data/12.html

自然熱の有効利用

パッシブハウスで注目されているのが、この「自然熱の有効利用法」です。

冬場に威力を発揮するのですが、昼間の日差しを室内に取り込み、その熱を蓄熱することで夜間や悪天候の日でも室内を快適な温度に保つようにします。

このような方式のことを「ダイレクトゲイン方式」といいます。これから家づくりを考えているのであれば、ぜひ知っておきたい用語の1つだと思いますので注目しておきましょう。

ダイレクトゲイン方式

出典:http://www.global-kansai.or.jp/ecohouse/data/22.html

補助金の対象にならないか確認する

パッシブハウスの認定を受けたからといってもらえる補助金は現時点ではありません。

ただパッシブハウスを目指すなかでZEH住宅の基準をクリアすればZEH補助金がもらえる可能性があります。

同じように長期優良住宅や低炭素住宅といった、優れた省エネ性能をもつ木造住宅に対して交付される地域型住宅グリーン化事業(2021年度分は締め切り済)にも適用される可能性があります。

パッシブハウスを安く建てるコツ

パッシブハウスを少しでも安く建てたいのであれば土地探しから専門家に相談することをお薦めします。

どんな土地でもパッシブハウスを建てることは可能なのですが、採光や通気の悪い土地だと断熱性能をあげるため余計な費用が掛かってしまいます。

つまりパッシブハウスの建築費用を抑えるためには、立地条件の良い土地を探すというのが第一条件になります。

一条工務店でパッシブハウスを建てることはできる?

大手ハウスメーカーのなかで、高気密高断熱住宅を建ててくれる会社といえば一条工務店です。

そんな一条工務店でもドイツ基準のパッシブハウスには及びません。

また一条工務店や積水ハウスでパッシブハウスを建ててもらうことは可能なのか?という点ですが、基本的にドイツ基準のパッシブハウスを建ててくれる大手ハウスメーカーは無いに等しいです。

もしかすると、三井ホームなどのように外部デザイナーと委託契約している会社に依頼をすれば可能かもしれません。

リフォームでパッシブハウスにできる?

既存の一般住宅をリフォームでパッシブハウスにすることは可能なのでしょうか?

2014年に北海道の住宅会社がリフォーム物件で日本初のパッシブハウス認定を受けることに成功しています。

ただ、リフォームの内容をみると断熱材を壁に550mm、天井と床に600mm充填。

さらにドイツのパウル社製の熱交換換気システムを設置など、1坪あたり50万円ほどのリフォーム費用がかかったそうです。

35坪の家だと考えるなら2,000万円近いリフォーム費用が掛かっていることになります。

パッシブハウスの認定を受けるために断熱性能を上げるだけでこの費用ですから、ここにシステムキッチンの交換、外壁や屋根の再塗装などのリフォーム費用を考えると、とても現実的な金額とは言えません。

まとめ

今回はパッシブハウスの特徴や予算について紹介してきました。

四季による気候の変化が大きい日本だからこそ、パッシブハウスのような省エネ住宅に注目が集まります。

光熱費の節約にもなり、健康で快適に暮らせるパッシブデザインの需要はこれから益々高まってくることが考えられます。