デザイン住宅には明確な定義がないのですが、イメージ的にはハウスメーカーや工務店の注文住宅よりもより施主の希望に沿った、住宅になります。
また、「デザイナーズ住宅」もと同じようなイメージになります。
ここでは、デザイン住宅とはどういったものなのか、2つのポイントに絞って解説していきます。
- デザイン住宅の事例集
- デザイン住宅で失敗しないポイントと費用の目安
ハウスメーカーの建築実例
デザイン住宅を建てるには、建築家や設計事務所にお願いしなければと思っている人も多いかと思いますが、大手のハウスメーカーでもデザイン住宅に対応している会社は多くあります。
今回はその中から3社をピックアップして紹介します。
ミサワホーム
大手ハウスメーカーの中でも、デザイン性の高い住宅といえばミサワホームです。
実際に1991年にはじめて工業化住宅としてグッドデザイン賞を受賞して以来、2020年まで31年連続でグッドデザイン賞を受賞しています。
まずはミサワホームのラインナップの中で、デザイン性の重視した「INTEGRITY(インテグリティ)」から紹介します。
INTEGRITY(インテグリティ)
「INTEGRITY」は、これまでのミサワホームが培ってきたデザイン住宅の経験を詰め込んだ住宅となっています。
一般的なデザイナーズ住宅のように1邸ごとに設計するのとは違い、ミサワホームのラインナップに組み込まれたデザイン性の高い住宅になります。
さらに、デザインにこだわりたい人は、ミサワデザイナーズに依頼して、自分好みの家を設計してもらうという方法があります。
ミサワデザイナーズ
ミサワホームにはデザイン住宅のプロ集団(ミサワデザイナーズ)がいて、別途費用はかかりますが設計を依頼することができます。
こちらを利用すると、設計の初期段階からミサワデザイナーズの担当者が立ち会ってくれ、施主の希望はもちろん、住宅づくりのプロとして多彩な提案をしてもらえます。
ミサワデザイナーズになるためには、独自に創設された厳しいカリキュラムを終了する必要があり、全国でわずか123名(※2020年10月時点)しかいません。
なお、高級志向の邸宅を建てる場合は、この紹介する「センチュリーオフィスデザイン」をチェックしてみてください。
センチュリーオフィスデザイン
ミサワホームのデザイナーズ集団で最高峰に位置付けられているのが「センチュリーオフィスデザイン」というデザイナーズ組織です。
このセンチュリーオフィスデザインに所属するのは、全国のミサワデザイナーズの中から選抜された精鋭たちで構成されており、日本全国の主要都市に事務所があります。
こちらの物件は、敷地がほぼ三角形だったことから大変設計に苦労されたようですが、センチュリーオフィスデザインにお願いすれば、素晴らしいデザイン住宅を建てることができます。
三菱地所ホーム
「ROBRA(ロブラ)」は、三菱地所ホーム独自の新工法が採用されており、他社では真似ができないデザイン住宅を建てることができます。
ROBRAの詳細については、「三菱地所ホームの坪単価と価格」で詳しく解説しているのであわせてチェックしてみてください。
さらに三菱地所ホームでは、家づくりのスペシャリスト集団が集結してサポートしてくれる“1邸1プロジェクト“というサービスがあります。
1邸1プロジェクト
三菱地所ホームで契約すると、すべての物件に対して専任のプロジェクトチームが編成されます。
一般的な住宅会社の場合、担当の営業マンが施主の希望をヒアリングしながら、ベースとなる間取り図の枠組みを作っておいて、それを設計士が製図するという手順なので、個性的なデザインの住宅はスキル的に難しいのです。
しかし、三菱地所ホームでは最初から専門のアーキテクト(建築家)に相談しながら、家の間取りを作っていくことができるので、個性的なデザイン住宅にもしっかりと対応することができます。
無料設計オンラインサービス
三菱地所ホームでは契約前の人でも、無料で設計図を作成してくれる「Premium Planning」というサービスがあります。
公式サイト内の専用ページで簡単な質問に答えていき、自分たちの家づくりに対する考えを書き込むだけで、希望に沿った間取り図、外観パース、見積書を無料で作成してもらうことができます。
「Premium Planning」は三菱地所ホームのみのプランですが、他社も含めて比較したい人は、「タウンライフ」の間取りサービスを活用してみてください。
自分たちの希望と入力するだけで、オリジナル間取りを作成してくれるサービスで、各社のプランを比較することもできるので、予算を抑えて満足する家を建てることができると思います。
三井ホーム
三井ホームでデザイン住宅を建てるとき、理解しておくポイントが設計士の存在です。三井ホームは基本的に3タイプの設計士がいます。
- 三井ホーム社内の設計士
- 三井ホームデザイン研究所(子会社)の設計士
- 三井ホームと提携している社外の建築家
変形地や狭小住宅など、設計が複雑な案件ほど、提携している社外の建築家にお願いしているように感じます。
三井ホームデザイン研究所
三井ホームの100%子会社に「三井ホームデザイン研究所」という会社組織があります。
三井ホームで特に優秀なデザイナー(設計士)を集めた組織で、三井ホーム以外からの設計依頼も受けています。
三井ホームデザイン研究所では、100名ほどの従業員がいますが、その中でも半数の50名ほどが一級建築士で構成されています。
提携している独立系の建築家
三井ホームのデザイン住宅の特徴は、社外の建築家(約400名)と提携しており、彼らに設計を依頼することができる点です。
先に紹介したミサワホームと三菱地所ホームも優秀な設計士が担当してくれるのですが、彼らは社員なので、自社のルールや規律に縛られてしまいます。
しかし、三井ホームでは外部の社外建築家にお願いすることで、社内ルールに縛られることなく、より独創的なデザインの住宅を提案してくれます。
設計事務所の建築実例
デザイン性の高い住宅を希望するのであれば、ハウスメーカーや工務店で建てるより、設計事務所や建築家にお願いするほうが、予算や設計の自由度という点では融通が利きます。
ただし、問題となるのが高額な設計料と建てた後の保証やメンテナンスです。そのため、ハウスメーカーなどとしっかり比較しながら検討していくのがポイントです。
アーキテクツ・スタジオ・ジャパン
アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)は、全国の建築家と各地域の建設会社や工務店がコラボすることで、建築家という存在をより身近なものにしてくれます。
各地域に建設会社や工務店が営むスタジオと呼ばれる営業拠点が存在し、そこから希望に合う建築家を紹介してもらうシステムになっています。
2020年10月時点で、スタジオは全国に96カ所あり、登録している建築家は3000人を超えています。この数は日本全国の建築家のおよそ3分の1に該当するそうです。
ASJでは2つの家づくりコースが用意されています。
PLANNING COURSE
建築家ととことん打ち合わせをして、完全オリジナルのデザイン住宅を建てることができるコースです。
時間をかけて、じっくり建築家と話し合いをしながら家づくりを楽しみたいという方はこちらのコースがおすすめです。
料金は割高になりますが、同時に2名や3名の建築家に相談できるコースもあります。
PROTO BANK
ASJで過去に建築した住宅の中から、自分たちの希望に合う建物をチョイスして、それをベースに家づくりを進めていくコースです。
自分たちが希望する家の形がすでに決まっているので、あまり時間をかけることなく、スピーディーに家づくりをすることができ、コストも低く抑えることができます。
ちなみに「PLANNING COURSE」と「PROTO BANK」を併用していくコースもあります。
せっかくだから一度は「建築家とじっくり打ち合わせをしてみたい」とは思う人も多いでしょうから、最初は「PLANNING COURSE」を利用して、間取りや予算などを検討しながら途中で「PROTO BANK」へ移行することもできます。
あくまでも参考例ですが、37坪ほどの家を建てるとした場合、「PLANNING COURSE」と「PROTO BANK」では、建築費だけで500万円ほどの差が出ることもあります。
フリーダムアーキテクツデザイン
フリーダムアーキテクツデザインは、創業25年の老舗建築設計事務所です。
平均して年間に400棟以上の住宅建築実績があり、独立系の建築設計事務所としては全国1位の受注件数です。
フリーダムがハウスメーカーや工務店と違うところは、間取りの自由度はもちろん、使用する建材や性能においても一切の制限を設けず、自由な発想でこだわりの家づくりを徹底しているところです。
そのためハウスメーカーなどでは難しい、特殊なデザインの住宅を手掛けることも珍しくありません。
フリーダムの営業拠点は、2020年10月時点だと「関東、関西、東海、九州」の4つのエリアに限られており、全国にスタジオが17カ所あります。
土地探しから家づくりまでをワンストップで依頼することもできるので、土地を所有していない人におすすめです。
フリーダムでは、設計費用として工事代金の12~15%となっていますので、2,000万円の工事費であれば、設計監理費として240~300万円ほどになります。
この金額は、建築設計事務所としては一般的な相場だと思います。
L.D.HOMES
L.D.HOMESは「ラブデザインホームズ」の略称です。
L.D.HOMESは個性的なデザイン住宅ではなく、あくまでも暮らす人の生活スタイルを重視したシンプルなデザイン住宅を建てています。
営業エリアは、東京、大阪、神戸の3都市で、坪単価は55万円~となっています。もちろん、それとは別に設計監理費が工事代金の10~12%がかかります。
それでも建築設計事務所としてはかなりリーズナブルな価格設定だと思います。
その他の建築実例
このブロックでは、ちょっと個性的なデザイン住宅やローコストのデザイン住宅など、ここまでに紹介できなかった物件をいくつか紹介していきたいと思います。
エースホーム
ローコスト住宅のなかでも、とくにデザインにこだわった家づくりをしているのがエースホームです。
エースホームでは2020年10月時点で、13種類の住宅商品が販売されているのですが、その中でもデザイン性の強い住宅をいくつか紹介しておきます。
skipu(スキプー)
その名のとおり、スキップフロアーを意識した住宅です。
スキップフロアーがあることで、小さい子供の遊び場にもなりますし、今の時代だとリモートワークの専用スペースとしても活用することができるのではないでしょうか。
NOON(ヌーン)
今どきのスタイリッシュなデザイン住宅であれば、キューブ型のNOONがおすすめです。
キューブ型の特徴は吹き抜けを設けやすいことです。
エースホームの建物価格帯は、メーカー公式サイトより建物価格1,500万円から2,000万円となっていますので、建築家に依頼してデザイン住宅を建てるよりもかなりリーズナブルです。
エースホームの詳細については、「エースホームの坪単価と価格」で詳しくまとめてているので、あわせて参考にしてもらえばと思います。
平真知子一級建築士事務所
今回紹介するのは、東京都町田市に建築事務所を構える「平真知子一級建築士事務所」です。
テレビ番組に出演したことのある建築士さんで、その時に紹介されてたのが平建築家の代名詞ともいえる六角形の家です。
下の図をみて頂ければ、かなり特殊な間取りになっていることがわかるのではないでしょうか。
このようなデザインの外観や間取りの家って、普通のハウスメーカーや工務店では絶対に出てこない発想だと思います。
デザイン住宅の家づくりポイント
おしゃれなデザイン住宅を建てたいけど、
- どこに頼めば良いのかわからない
- 一般的な注文住宅よりどれだけ高いの?
など、わからないことも多いのではないでしょうか。
そこでここからは、デザイン住宅を建てる際の基礎知識について簡単に説明していきたいと思います。
デザイン住宅の値段
個性的なデザイナーズ住宅を建てようと思ったら、建築費は割高になってしまいがちです。
特に建築設計事務所や建築家に依頼すると、建築費とは別に設計費が発生します。
デザイン住宅の費用を抑えようと思ったら、大手ハウスメーカーに依頼するのが一番です。
最近のハウスメーカーは個性的なデザインの住宅も販売していますので、まわりの家と変わったデザインの家を建てることもできます。
逆に費用が一番高くつきそうなのが、地元の工務店だと思います。
理由は、従業員10名くらいの工務店であれば、ほぼ外部の建築設計事務所に外注することになるため、その費用分が追加されてしまうからです。
それだったら最初から建築設計事務所に依頼する方が確実に費用を抑えることができます。
ハウスメーカー、設計事務所、工務店どこがいい?
デザイン住宅を建てるのであれば、どこに依頼するのが一番良いのか?
先の「デザイン住宅の値段」の項目でも触れていますが、総合的に判断すると大手ハウスメーカーか建築設計事務所の2択になります。
まわりの住宅と外観デザインで差別化したいというのであれば、ハウスメーカーでも大丈夫です。
そのかわり、あまり奇抜なデザインの住宅には対応できませんし、内装や設備品にも仕様が決まっていることを理解しておきましょう。
変形地や狭小住宅のように、少しクセがある住宅を希望する場合は、建築家を紹介してくれるアーキテクツ・スタジオ・ジャパンなどでも問題ありません。
まったく白紙の状態から、じっくり打ち合わせをして理想の家づくりをしていきたいというのであれば、建築設計事務所や建築家をおすすめします。
デザインにこだわりすぎない
デザイン住宅で良くある失敗例が、建物の外観デザインにこだわりすぎ、使い勝手の悪い間取りの家になってしまうことです。
外観はおしゃれだけど、生活動線が悪く、収納も少ない家では本末転倒です。
デザインも大事ですが、その家で暮らす家族にとって住みやすい間取りにしてあげることを最優先しましょう。
家族みんなの生活動線だけでなく、採光や通風にもしっかり目を向けるようにしましょう。
気をつけておくべきポイントは、自分たちが希望する外観デザインを最初に伝えておくことです。希望するデザインがわかっていれば、それを考慮した間取りのプランニングを提案してくれます。
デザイン住宅のメリット、デメリット
デザイン住宅は個性的な住宅を建てられるというメリットがあるほか、様々なデメリットにも注意しなければなりません。
計画段階では見えてこないデメリットもあるので、メリットとデメリットをしっかり理解したうえで検討するようにしましょう。
メリット
- 個性的なデザインの家を建てることができる
- 変形地や狭小住宅にも対応しやすい
自分だけのオリジナル性の高いデザイン住宅を建てることで、まわりの家と差別化できるのがデザイン住宅の最大のメリットでもあります。
また、形がいびつな土地や狭小地でも、建築家が個性的でおしゃれな家づくりを提案してくれます。
変形地になると対応が苦手なハウスメーカーや工務店も少なくありませんので、敷地に不安を感じるのであれば積極的に建築事務所に相談するようにしましょう。
デメリット
- 建築費が高くなる
- 完成までに時間が掛かる
- 売却しづらい家になることも
- 建築家の個性が出過ぎてしまうことも
建築家に依頼することで、どうしても建築費という面では高額になってしまいがちです。
また、打ち合わせを重ねながら間取りやデザインを固めていくので、一般的な注文住宅よりも時間が掛かってしまいます。
それと気をつけたいのが、建築家は自分の作風に個性を出しやすい傾向にあるので、自分たちの希望するデザインや条件に近い建築家を選ぶようにしましょう。
あまりに個性的な家になってしまうと、もし将来売却することになったとき売れづらい家になる恐れがあります。
デザイン住宅に関する疑問、質問
デザイン住宅に関して、今回紹介しきれなかった部分や、ネットなどで良く質問されている内容などをまとめてみました。
耐震性や断熱性は?
ハウスメーカーの場合、デザイン住宅にしたからといって、その業者が基本仕様としている構法や耐震性が大幅に変わることはありませんし、断熱性能にしても同じです。
ただし、建築設計事務所や建築家に直接依頼するのであれば、工法や断熱性能もすべて自分たちで好きに決めることもできます。
その反面、性能にこだわれば、それだけ建築費が高くなることは覚悟しておきましょう。
希望する住宅の伝え方
施主から良く耳にするのが「自分たちの希望や要望の伝え方がわからない」という声です。
確かに希望するデザインがあっても、それを上手く伝えるのって難しいですよね。
多少、建築の知識があれば「プロヴァンス風」や「カリフォルニア風」の外観にしたいと言えますけど、まったく無知の状態だとそれも難しいはずです。
そんなときは難しく考え過ぎず、自分たちが良いなと思うデザイン住宅を探すところから始めてみましょう。
先ほど紹介したような住宅をベースに希望を伝えるでのもOKですし、ネットやSNSで理想の家があれば、それを見せるのでもOKです。
建築家は出張してくれるの?
デザインにこだわる施主ですから、どうしてもこの建築家さんにお願いしたいというケースも珍しくありません。
しかし、九州の福岡でマイホームを建てたいが、依頼したい建築家が東京というように遠方という場合もあります。
個人事務所の建築家であれば、このように遠方の物件でも対応してもらえることが多いので、まずは一度コンタクトを取ってみることをおすすめします。
遠方の場合は、別途出張料として宿泊費や交通費を請求されるのが一般的です。
土地探しも依頼できるの?
ハウスメーカー、工務店、建築設計事務所、どこに依頼するにしても土地探しから相談できます。
特に建築設計事務所の場合、建築士さんが同行して土地を見てもらうことで、より具体的なアドバイスをもらうことができます。この料金は設計監理費に含まれていることが多く、別途費用などを請求されることもありません。
まとめ
今回は、デザイン住宅について解説しました。
デザイン住宅と言っても得意なスタイルは住宅会社や建築家によって大きく違ってきます。
同じような要望を伝えても、まったく異なる間取りやデザインの住宅になることが多いです。
満足できるデザイン住宅を建てるには、なるべく多くの住宅会社や建築家に相談することが大切です。
デザインばかりに気を取られることなく、暮らしやすい家づくりをすることも心がけておきましょう。